ウェールズにある城の最高傑作と讃えられるコンウィ城は外壁工事共に1283年から1287年の約4年半で造られた。
21の塔をもち、塔のてっぺんの草地にカモメが巣をつくっていて、初夏から夏にかけて訪れるたびにヒナを何羽も見た。
 
コンウィの町が美しいのは、コンウィ城の景観のみならず、漁船にまじって小さな帆船が浮かぶ港の風景が目に入るからだ。
そして周囲は緑ゆたかな丘に囲まれ、徒歩、ドライブどちらでめぐっても魅了される。
コンウィ城
コンウィ城
 
コンウィ城がわずか4年半で完成したのは当時としては異例の早さ。石材の切り出しと輸送に多くの時間を
要するところを、近距離にある廃城デガンウィ城の石材を使うことで早期の築城を可能にしたという。
安土桃山時代の日本でもおこなわれた手法。
 
コンウィ城
コンウィ城
 
コンウィは海に注ぐコンウィ川とジフィン川にはさまれた地形の先端の町。三角形にかたどられた城壁(総延長1300b)
に囲まれた城塞都市。人口は約3800人、Conwyはウェールズ語で輝く川の意。
 
 
コンウィ城
コンウィ城
 
北ウェールズのコンウィ城、ハーレフ城は名城といわれるだけあってすばらしい。
季節、時間、天候によって色が微妙に変化する。陽が落ちたり曇ったりするとトーンも落ち、渋い色になる。
 
エディンバラ城、アイリーン・ドナン城などステキな城をみたけれど、忘れがたいのは孤高の廃城ダノッター城だ。
思い出すだけで胸がいっぱいになる。ウェールズへ行くならコンウィ城、ハーレフ城を見逃すべきでない。
城は城のみにあらず、ロケーションがすばらしくないと城も見劣りするのである。
 
コンウィ城
コンウィ城
 
みてのとおり、塔の上または壁面の上に人がいる。くずれそうになったら修復して再び登れるようにする。
上から見ると城のようすがよくわかるし、周囲の美しい風景が手にとるように見わたせる。
 
コンウィ城もウェールズにある多くの城と似たような運命をたどる。エドワード1世(1239−1307)以降、
歴代のイングランド王はウェールズの政局が安定するにつれてコンウィ城からはなれ、別の土地に宮殿を建設した。
廃墟となったコンウィ城は荒れはて、『1627年にはわずか100ポンドでチャールズ1世が
国務大臣コンウィ公爵に城を売却する。』(西野博道「イギリスの古城を旅する」)
 
1688年の名誉革命後、『さらに荒廃はなはだしい城は解体請負業者により利用可能な資材は売買され、
アイルランドへ運ばれる。屋根、木材、鉄製品は売り払われ、城は完全に屋根なし床なしの廃墟となった』(前掲書)
 
 
コンウィ城
コンウィ城
 
いつ行っても思うのは、城の石の色(茶色味を帯びたグレー)と合うのは赤ということである。
欲をいえば髪の色はブロンドかアイボリー。英国の城にはやはり西洋の女性が似合う。
 
それにしても、コンウィ城の城めぐりというか塔めぐりは、コース、順路がバラエティに富んでいて小気味いい。
 
塔
 
シェイクスピア「リチャード2世」にこんなセリフがある。舞台はコンウィ城だ。
 
「パーシー、ボーリンブルックさま、この城は王によって見事に兵力が結集され、軍の侵入を阻んでいます」
 
カモメがいっせいに飛び立つさまは、シェイクスピアの戯曲をいっそうひきたてる。
 
 
駐車スペース
駐車スペース
 
コンウィ城正門の駐車場に空きがないときは、城壁をぐるっとまわってここに駐車します。
 
 
コンウィ城 城門
コンウィ城 城門
 
コンウィ城にはいくつか城門があるけれど、この城門はかなり狭い。普通乗用車1台通るのがやっと。
このバス、ふつうの観光バスとちがって幅が狭い。だからどうにか通行可。
 
コンウィ城 城門
コンウィ城 城門
 
この城門はハイストリートへの門で幅は広い。小型車&普通乗用車は楽々。
 
Smallest House
Smallest House
 
「英国で最も小さな家」はギネスブックに載っている。間口一間(1.8m)、奥行き一間半強(3m)。
間口は左の女性の身長とほとんど同じ。
 
1Fには暖炉、燃料貯蔵庫(椅子兼用)、テーブル、2F寝室へのはしご、シングルベッド、化粧台などが
巧みにセッティングされており、壁に絵もかかっている。
19世紀末ごろまで中に身長1,9mの船乗りが住んでいたらしい。用足しは共同トイレだったとか。
 
 
 
ポピー
ポピー
 
城の塔頂や城壁の上にはカモメ、ハトのほかに植物も住んでいる。
 
コンウィ城
コンウィ城
 
 
テルフォードの吊り橋
テルフォードの吊り橋
 
設計技師・建築家のトーマス・テルフォード(1757−1834が手がけた吊り橋は
コンウィとスランデュドゥノを結ぶ架け橋。
 
 
コンウィ城 夕暮れ
コンウィ城 夕暮れ
 
初めて訪れる町に魅了され、再訪して気づかなかったことに気づき、再々訪すれば深くなじんだ気分になる。
遊女は同じ客が二度来ることを裏を返すという。旅は魅惑と蠱惑を併せ持つ理想の遊女に似ている。
 
旅と遊女の違いは心の風景となるかどうかだ。耽溺は夢のごとくさめるが、旅の情熱はさめない。
追憶の淵をさまよい、思い出の川に流されても形を変えず記憶にとどまる、心の風景とはそういうものである。