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よくもまあと言いたくなるような崖っぷちにつくられた家と道。
赤茶けた岩肌の断崖に沿って遊歩道が整備されている。
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防波堤に打ちつける波。遊歩道はシドマス観光の人気スポット。
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まだ初夏、ミッドサマー・ホリディも来ていないのに、気の早い連中は海岸で遊び、プロムナード散策を愉しむ。
8月初旬の「シドマス・フォーク・ウィーク」(Devon2014)期間中に較べると、これでも人通りは少ない。
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この日は夏日、アイスクリームもドーナツも飛ぶように売れていた。
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聞けばわかることを聞かずに想像する。ヒマだね、わたしも。
鮮やかなブルーとピンクは娘。ブルージンズは母親。黒いジーンズは祖母(左手のシワが高齢者を示す)。
あるいは年老いた母と3人の娘(それはないか)。会話と雰囲気からして他人同士ではない。
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シドマスの人口は約12000人、デヴォン海浜の町としてはかなり多い。
背後の急勾配の崖、海岸に突き出た岬は人口過疎。12000の住民がいるとは思えない。
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かつての見張り台を利用して観光用に造りかえている。
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階段の影がもうひとつの階段にみえたりもして。影のほうはさらに危なっかしい。
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ラドラム湾(Ladram Bay)のこのあたりに来ると観光客のすがたもなく、赤い崖も遠くに見えて、
遠くに来たという実感がわいてくる。
崖の岩は中生代三畳紀(2億5000万年〜2億1000万年前)の硬質砂岩で、次の中生代ジュラ紀(恐竜全盛時代)より古い地層。
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駐車場が遠い場合、駐車場所を確保するのはタイヘン。どこにでも駐めていいわけはなく、
みなさんが駐めているところに。
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この道は空いているけれど、駐車してはいけません。
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シドマスの中心部から北東4キロに位置するドンキー・サンクチュアリーは
文字通りロバの保護区(聖域というほうがいいかも)。
1969年にエリザベス・スヴェンセン(1930−2011)が設立したスレイドハウス・ファーム
の敷地にあり、来場者は無料で係員の作業を見学でき、ロバと遊ぶこともできます。。
この女性、飼育係ではなく一般の来場者。
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この方たちも一般の来場者。
ロバといえば、50年くらい前まで「ロバのパン屋」という移動販売のお店がありました。
荷台(ワゴン)をロバにひかせて、音楽を流しながら町を移動しパン(当時は主に蒸しパン)を売る。
昭和40年代初めまでロバでしたが、その後自動車による販売に切りかわりました。
近年「移動販売」が増え、2015年5〜6月のドラマ「ランチのアッコちゃん」の戸田菜穂がそういう役。
パン屋じゃないけど。
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エリザベス・スヴェンセンは子どものための信託を創設し、
乗馬療法を応用して子どもの治療にあたり、
ロバ以外にも動物擁護の基金を創設、国内外で広く活動を続けました。
野外活動の一環としてファームの外でロバと遊ぶ子ども。
ところでこのロバ、大型のぬいぐるみみたいです。
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人も歩けばロバに当たる。ファームから出て、ロバと散歩を共にしてロバの保護育成、動物の愛護運動に貢献しています。
ファームには常時500頭ほどのロバがいるとか。
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ロバはきわめておとなしい性格なので、初めてふれる人でもだいじょうぶ。
ふれる相手が人間ならこうはいきません。
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近年、季節感が失われ、雲も季節感がうすくなった。秋に発生したはずの雲は初夏に、真夏の雲がおそい春や初夏に、
ほかにもいろいろ。年中、四季の雲を見ることのおもしろさ、つまらなさ。
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シドマスからA375を14キロ北上し、ホニトン(Honiton)でA373を北北西に5キロ進み、ゴドフォード・クロス(Godford Cross)で
右折し、3キロ行くととダンクスウェル(Dunkeswell)村がある。レイクビューマナー(Lakeview Manor)はダンクスウェル村の
小さな宿(17室)。1、3キロ西方にダンクスウェル飛行場(Dunkeswell Airfield)という滑走路の短い訓練用飛行場があるが、
数人乗りの民間セスナ機、ヘリコプターが日に1〜2機離発着するだけで(日によってはゼロ)、騒音に煩わされることはない。
宿は特筆すべきものは何もなく、私有地が45エーカー(約55400坪)あり、広い森に遊歩道が整備され、散策にはうってつけ。
なによりもいいのは、中国人ツアーが決して足を踏み入れる場所ではないし、ツアー客が泊まるには部屋数が少なすぎること。
B&Bのよさはそこにつきる。用途と目的に合うB&Bを拠点(4泊)にして南東デヴォンの海岸を巡る。
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デヴォン州の州都エクセターの人口は約11万人。エクセター大聖堂はその象徴ともいうべき荘厳美に満ちている。
現在の大聖堂は1270年に大幅な改造計画が実施された90年後、1360年に完成。
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Mol's Coffee House のモルはメアリーの省略。創立は1596年であるが、コーヒーを提供しはじめたのは17世紀半ば以降。
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ペイントンはトーキーの南西6キロに位置する海浜観光地。コッキントンはトーキーとペイントンのほぼ中間点。
英国の道路標識の見やすさは特筆もので、単に目につきやすいばかりか、駐車場の台数まで記している標識もある。
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この道しるべはフットパスの歩行者用。
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左の家はウィーバーズ・コテージ。ウィーバー(Weaver)は機織り職人。19世紀初頭までここは機織り職人の
住居兼仕事場だった。
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正面の茅葺き屋根の家、昔は鍛冶屋、いまはギフトショップ。
コッキントン村には17世紀のイングランドがそのまま保存されている。
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右の家はウィーバーズ・コテージ。その奥は下↓
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ウィーバーズ・コテージ(Weaver’s Cottage)は年中無休のティーハウス。
コーヒー、軽食などもメニューに載り、茅葺きの民家ということもあって客足が絶えない。
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トーキーで生まれたアガサ・ミラー、結婚後はクリスティーと名乗った著名な作家は、
トーキーの西1マイルのコッキントン村までしばしば馬に乗って来たという。。
アガサ・クリスティー(1890ー1976)が少女時代を過ごしたトーキーの自宅近くに居を構えていた
イーデン・フィルポッツ(1862−1960)は、アガサに激励と助言をし、後に彼女の作家としての
熟達に寄与した面があったらしい。
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ドラム・インはパブ&レストラン。昨夏より人が多いのは、初夏であることと週末のせいかもしれない。
この建物は20世紀のもので、建築家サー・エドウィン・ラッチェンスが1936年に設計。
料理はいまいちということで、ティー・ブレイクだけ。
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デヴォン有数の観光地トーキに近く、近年つとに名が知れわたっているからか、米国、ドイツなどからの観光客が増えた。
英国王の後継者が途絶えた1714年、英王室の遠縁ハノーヴァー家出身のジョージ1世が英国王に即位して以降、
英王室にドイツ・ハノーヴァー家の血が受け継がれているからか、ドイツが不況知らずであるせいか、
暗く冷たい空から逃れてきたのか、ドイツ人が多くいた(第一大戦中ハノーヴァー家はウィンザー家に改称)。
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日本の雨はまとわりつく感じがあってイヤだけれど、イングランドの雨はパァーッと降ってパッとやむ。
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ダートムーアの面積は625平方キロ、花崗岩の大地である。ムーアに突きだした巨大な花崗岩が旅行者を迎える。
巨岩を見たいと思わない者の視界に容赦なく入ってくる。
ファー・トー(Fur Tor)のTorは岩山の意。
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ダートムーアの景観を景観美というのは正しくないだろう。丘陵の高い位置(往々にして頂上部)には
地下から引き離された巨岩の塊があり、曲線美の邪魔をする。角のように尖った岩が空を指さしているからだ。
ダートムーアを舞台にしたミステリー小説は、コナン・ドイルの「バスカヴィル家の犬」(1902年刊)、
イーデン・フィルポッツの「赤毛のレドメイン家」(1922年刊)。
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ダートムーア Hole rock River Teign |
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ダートムーアの奥地は、近隣の住民の言によると、川ではなく、水たまりが流れているのだそうである。
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無数の水たまりはところどころで合流し、新たな流れとなって、村落のいのちの水となる。
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川沿いの緑床は夏でも涼しく、小さな谷間は動物と人間が共存できる条件がととのっている。
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ブレントーの丘には13世紀に建てられたミシェル・ド・ループ教会(St Michael de Rupe)跡がある。
1995年、落雷にあって被害をうけたが、その後修復された。
デヴォン州は中世から近世初頭にかけて『鉱業活動の中心地であった。コーンウォールと同じように、
通称「錫鉱山」と呼ばれる坑夫たちの同業組合があり、ダートムーアの最も荒涼たる場所で年次集会を開いていた。
良質な錫と銅の鉱脈が掘り尽くされてしまったので、採掘はほとんどなされなくなった。』(カザミヤン著「大英国」)
ダートムーアはこの地を水源とするダート川(River Dart)と荒地ムーア(Moor)から名づけられた。
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花崗岩が大地から突き出すようすは壮観。
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ダートムーアを訪れるのであれば、どの村でもいいから最少2泊は必要だ。
急ぐことはない、朝はゆっくりして、なんならお昼ごろからでもいい、散歩気分で25分か30分歩けば高台に出る。
驚くほどおいしく新鮮な空気、ピリっという感じのほどよい冷気が旅人を促す、もう少し歩いてみたらと。
帰国して自慢するものは何もない。新鮮でおいしい空気なら日本の村や山にもいっぱいある。
特別の装備も体力も必要とせず、普段着で行って、山小屋とはちがうB&Bに泊まって、満ち足りた気持ちに
なる場所はそう多くはない。そしていまだに農業と牧畜に依存している町や村は貴重。
イングランドには、ヨークシャー・ムーア、サウスダウンズ、サウス・ウェスト・コースト、湖水地方などのほかにも、
いたるところに網の目のごとく張り巡らされたパブリック・フットパスが旅人を待っている。
散歩途中で見知らぬ人と挨拶を交わす。英国人ならよほどの変わり者でもないかぎり向こうから挨拶してくる。
見事なまでに自然で感じがいい。それだけで旅に出てよかったと思えるほどに。
ひんやりした空気を胸一杯吸い、遠くの風景と空をながめ、無窮の渇望から解放される。
旅の終わりは始まりである。あした終わるかもしれない旅の終わりは、夢の終わりである。
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