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6月中旬〜7月上旬のハイランドは格別。野生のアイリスが咲きそろう。
ここから城へ直線距離で450b。北からのぞむアイリーン・ドナン城。
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アイリーン・ドナン城へはA87から小道が設けられていて、石造りの橋をわたって入る。
スコットランドのなかでもこのあたりは高地地方すなわちハイランドと呼ばれる。
低地地方(ロウランド)にあるエディンバラ旧市街の古色蒼然たる佇まいは別として、スコットランドの魅力は
ハイランドにつきるといってもいい。ハイランドの住民ハイランダーの凜然とした雰囲気、温かさにも魅了される。
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南からのぞむアイリーン・ドナン城。
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廃船もこうなれば箱庭、こういう意匠がそこはかとなく懐かしい。
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知る人ぞ知る、特別席である。
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この席も旅人の玉座ではなかったろうか。
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ドゥイッヒ湖(Loch Duich)の北西の畔に屹立するアイリーン・ドナン城は13世紀建造であるが、7世紀初めにつくられた
修道院の跡地に建てられたという。城は紆余曲折のあげくジャコバイトの反乱によって破壊され、その後廃城と化した。
1912〜32年、ジョン・マクレーが工事に着手して修復、現在の姿をとどめている。
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アイリーン・ドナン城は3つの小さな湖、ドゥイッヒ湖、ロング湖、アルシュ湖の三叉路に位置する。
光がみるものすべての印象を変える。朝夕は特に美しいけれど、昼間のかがやきもまた。
アイリーン・ドナン城の外観はテレビドラマ「ミス・マープル」(A・クリスティ)の「予告殺人」(95分)に4度出てきた。
それぞれの撮影はミステリーを予感させるに十分なもので、英国ドラマはそういう使い方がうまい。
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アイリーン・ドナン城は1955年に一般公開され、2009年の統計によると、53年間で314,000人が訪問したという。
年間平均6000人は少ないと思う、が、1990年代に訪問者は急増したようで、それまでは年平均千人ほどだったのでは。
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南西からのぞむ城。
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戦場においてスコットランド兵士がイングランド軍優勢にひるんでいたとき、バグパイプ奏者が丸腰で敵陣近くに進み、
バグパイプを演奏しはじめた。兵士たちはそれを見て奮い立ち、不利な戦況をくつがえしたという。
ハイランダーはいまもバグパイプには仲間を守る役割があると信じている。
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バグパイプの音色は哀調をおびている。この響きはスコットランド、それもハイランドで聴かねばならない。
楽器はロケーションを選び、奏者もまた背景を選ぶのである。奏者が若いからといってゆめゆめ油断めさるな。
老若男女を問わずハイランドのバグパイプ奏者は、聴く者の心に共鳴する何かを持っているからだ。
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西からのぞむ城
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西から城をのぞむ。
足を止めて風景をみる。ハイランド特有の古色蒼然たる風合い、空気の色を感じる。空気も風景も生きている。
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2014年7月現在、入城料は6ポンド50。外から城を見て撮影するぶんには無料。
入城休止期間はおおむね11月ー3月。
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つくった料理を召使い(執事でしょう)と、おそらく城主夫人がチェックしている光景。
奥にいる女中の蝋人形はうまくつくられている。
ジョン・マクレーが1932年に城の修復工事を終え、リニューアル・オープン記念晩餐会を催した。
その準備におおわらわの台所とスタッフの模様を再現した蝋人形。
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アイリーン・ドナン城のメインゲートを入ってすぐに「Recreated Kitchen Display」と呼ばれるスペースがある。
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この蝋人形、女性がかかえる解決不能の一瞬、さすが英国と思えるできばえ。
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アイリーン・ドナン城からA87を西へ11キロ進むとカイル・オブ・ロハルシュに着く。行程の約半分はアルシュ湖を左に
眺めながらのドライブ。この信号は踏切信号だが、おもしろいのは、列車はここを斜めに横切ることである。
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待てば海路の日和あり。一日何本走っているのかわからないけれど、出くわすこともある。
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カイル・オブ・ロハルシュの町に架かるスカイ・ブリッジ。これをわたるとスカイ島。
スカイ・ブリッジが完成したのは1995年10月。カイル・オブ・ロハルシュを訪れる旅行者は増えたが、
多くは通過するだけで宿泊客は少ない。人口850人のカイル・オブ・ロハルシュのB&Bはあてがはずれて
廃業に追い込まれた経営者もいたという。
スカイ・ブリッジ開業以来、通行料金の高さ(5ポンド70=500bに1000円は高すぎる)が問題視され、
2004年12月スコットランド政府は所有者からブリッジを買い取り、通行料を廃止した。
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夏、カイル・オブ・ロハルシュに宿をとり、アイリ−ン・ドナン城へ15分ドライブする。晴れる日、曇る日、雨の日。
天候はめまぐるしく変化し、日中の最高気温は20℃〜5℃を上下する。1日に四季があり、3泊で3ヶ月滞在した気分になる。
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晴れた日には見られない城の佇まい。
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A87とA887の交差する三叉路。ここからA887を北東に向かうとA82に出る。
A87を道なりに進み、InvergarryでA82を南西に進めばフォートウィリアムに出る。
ハイランドをドライブしていて常に思うのは、ここではカーナビはまったく不要であるということだ。
山のほかに高いものはなく、城の多くは湖畔や海辺にあり、道路からの眺望を妨げない。
高い建物のひしめき合っている都市部とちがって見通し抜群なのだ。
地図をおおざっぱに頭に入れておくだけで、道なりに走ればいい。道路標識は至るところにあり、
しかもわかりやすい。道路も単純明快、道に迷うことなど考えられない。
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シールブリッジという名の村のセルフサービス給油所。給油機は所変われば品変わる。
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ドーニー(Dornie)村の小舟はアルシュ湖を横切り、スカイブリッジをくぐって漁に出る。ドゥイッヒ湖の干潮時、このあたりは
干上がってしまうのでタイヘン、出ることも入ることもできず、干潟の舟となる。
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南からのぞむ城↑↓
水面に映る雲の動き、変化する空のかがやき、黙って見るだけで何時間いても飽きない。
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刻々と移り変わる風景を、どのくらい眺めていたろう。
旅はいつか終わる、人生が終焉をむかえるように。残された時間はわずかである。
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